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爪はなぜ、爪先に向かって伸びてくるのだろうか?
爪は、爪母でつくられている。しかし、爪母の細胞を別の場所に移植して培養すると、実は爪は円錐状に自由に広がって伸びていくのだ。
爪が、真っ直ぐ伸びるのには理由がある。
この仕組みを知ることで、自身の爪のウィークポイントを理解できるだけではなく、理想の爪に育てていくことができる。爪の生理の特性と真っ直ぐに生える仕組みを見ていこう。
この記事を読むメリット
- 健康的な爪と、そうでない爪の識別がつきアスリートのサポートができる
- 指先が外傷を受けた際に、ある程度のダメージ判断ができる
(病院に行くべきかどうか?) - 爪を自分の理想の形状に近づけることができる
- 爪の異常に早期に気づくことができる
健康な爪とは?
健康な爪は、うっすらとピンク色をしており、指先から正面に見ると少しアーチがかかっている(ネイル用語で、Cカーブと言う)
爪先は、皮膚から離れ白くなっているが、ピンクの爪床と爪先の間のラインは、歪みがなくラウンドを描いている。側爪郭から後爪郭にかけても、爪の割れや剥がれがなく、際まで爪床の皮膚と密着している状態である。
爪の生理
まずは基本的なことをおさらいしておこう。
爪は、爪の根元から生えてくる。外見からは見えないが、爪の根元にある皮膚に隠れた部分にある爪母が爪の工場である。
手の爪は成人の場合、1日に約0.1 mm伸びる。1ヶ月で約3 mmの伸長ペースだ。よく使う指ほど速く伸びると言われるが、どの報告でも小指がもっとも遅いようだ。
足の爪は成人の場合、手の約半分で1日に約0.05mm、1ヶ月で約1.5mm伸びる。足の爪の場合は、親指が最も速く伸び、小指が圧倒的に遅い。
加齢とともに伸長速度は遅くなり、夏よりも冬の方が伸びは遅い。
爪先に伸びる仕組み
それでは本題だ。
爪は、指先に向かって生えるように体の構造によって誘導されている。その重要な役割をするのが、爪床、爪溝、側爪郭、後爪郭だ。
円錐状に自由に伸びる爪に対して、各部位が壁のようにストッパーの役割をして、爪の伸長方向を制限しているのである。具体的には、後退方向、左右方向、下方向、上方向の4つの壁がある。その結果、爪は爪先に向かって伸びていく。
後退方向の制限
一番分かりやすいことだが、爪は指の第一関節の方向に向かっては生えて来ない。それはポケット状の爪溝があり、指の肉が強固な壁となっているからだ。
左右方向の制限
左右方向は、どうだろうか?
爪を抜爪すると、爪溝が爪の両側面までくさび形を保ちながらストレスポイントまで伸びている。これが左右のポケットとなり、壁の役割を果たしている。爪溝は言わば、爪のレールとなっているのだ。
下方向の制限
下方向については、末節骨と指の肉があるから容易に理解できるだろう。そのため、爪は指先の表皮に位置する爪床に沿って、這うように伸びていくことになる。
上方向の制限
最後の壁となるのが、上方向の制限。この役割を担っているのが後爪郭だ。
後爪郭は、爪溝と一体となって、爪根を覆っている。これは外傷から爪母を守るのと同時に、上方向に対しての壁をつくっている。
後爪郭は、後退方向、左右方向、下方向に比べて、非常に短い長さの壁である。この短い距離で爪が伸びる方向を決めるのであるから、非常に重要な部位であり、ダメージを受けた際のインパクトは大きい。
爪が一定方向に安定して伸びる仕組み
今まで見てきた通り、自由に伸びる爪に対して制限できる壁があることが分かった。しかし、これらはいずれも健康な状態を前提とした話である。
爪の周囲にダメージを負った際は、壁が崩れた状態が生まれ、爪の伸長に歪みが起きてしまう。アスリートにとってよくあるのは、上下方向の歪みだ。つまり、怪我や乾燥、またはストレスによる噛み癖による後爪郭へのダメージである。
後爪郭がダメージを負うと、爪と後爪郭の間に隙間が生まれる。この隙間によりおおよそ0度から45度の範囲でのブレが起きる。
健康的な状態と比較すると、一定方向に伸びるのには力学的な説明ができる。図を交えて解説しよう。
健康な爪の場合
健康な場合は、伸長方向、後退方向、上下左右と壁が正常に働いている状態だ。爪は、1ヶ月に3mm伸びるとお伝えした。アスリートは一般の人と比べて、爪の伸びは早いが、それでもまるまる生え変わるには約3〜4ヶ月かかる計算となる。
健康的な爪とは、この3〜4ヶ月の間、爪の周囲にダメージが少なく、壁が働き続けた結果と言える。
後爪郭にダメージを負った場合
分厚く盛り上がった爪、凸凹の爪、波打つ爪は、後爪郭の壁が崩れたことを意味する。以下の図をご覧いただきたい。
後爪郭がダメージを受けて、爪から浮いてしまった状態だ。こうなると正常な爪の伸長方向が上振れする余地が出てきてしまう。そして、実際に爪は上方向に伸びようとするのだ。結果、分厚い爪ができてしまう。
これが慢性化してしまうと起こる爪の症状には、爪甲鉤湾症や爪甲横溝がある。
それでは、ダメージの程度が軽微であり、約一週間後に完治した場合はどうだろうか?
言い換えると、上図の正常と異常を繰り返すことになが、結論から言うと、軽微であっても爪の伸びは絶えず止まることはないので、完治までの一週間の間は爪の厚さが不安定になることがある。
爪は約3〜4ヶ月の生え変わりサイクルがある。そのうち一週間、後爪郭が爪から浮いてしまっていたらその間に伸びた爪は分厚くなり、一週間後に健康な状態に戻っても、分厚くできた爪の部分は通常の厚さには戻らず、その厚さのまま爪先に向かって伸びていく。
逆に言うと、爪を見れば、アスリートがどのようなコンディションにいたかが逆算できるのだ。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
- 爪母でつくられた爪は、爪床、後爪郭、爪溝の壁に誘導され爪先に沿って伸びる
- 爪の周囲にダメージを負った際は、壁が崩れた状態となり、爪の伸長に歪みが起きる
- 健康的な爪は、約3〜4ヶ月の間、爪の周囲にダメージが少なく、壁が働き続けた結果と言える
- 後爪郭は、爪溝と一体となって爪根を覆い、外傷から爪母を守るのと同時に、上方向に対しての壁をつくっている
- 後爪郭のダメージは、怪我や乾燥、またはストレスによる噛み癖などが挙げられる
爪の構造を理解し、爪とうまく付き合うことで、アスリート自身の理想の爪にコントローラブルに整えることができる。そのためには、日頃からのケアが必須。トレーニングが終わった後は、指先をチェックしダメージの補修とネイルケアを怠らずに行いたい。強い爪は、爪のヘルスケアが行き届いた証であり、アスリートの誇りとなるだろう。