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巻き爪は、アスリートのパフォーマンスを著しく落とす。スポーツ全般に欠かせない安定した下半身は、足の支えがあってこそだが、日本人は足に何らかの悩みを持つ人は約7割とも言われている。その中でも最も多いトラブルが巻き爪。なんと日本人の10人に1人は悩みを抱えているほどだ。
そもそも巻き爪とは、なんだろうか?巻き爪になるメカニズムと予防方法を紹介する。
この記事を読むメリット
- 巻き爪がどのように起こるか知ることができる
- 長期に渡り巻き爪に悩んでいる人でも、今から試せる対処方法を学べる
- 少しでも早く巻き爪を治すために、家庭でできるセルフケアを知れる
- ラグビー、サッカーなどボディプレーが多いアスリートが予防に活かせる
巻き爪とは
巻き爪とは、爪の水平(横方向)の弯曲が強くなり、爪の端が弯曲して内側に巻き込み、指の先に食い込む症状。多くは足の親指で起こるが、それ以外の指で起こることもある。
巻き爪は、医学的には「陥入爪」「弯曲爪」「爪甲鈎弯症」という3種類に大別される。
陥入爪 … 爪の周囲の皮膚に食い込んで痛みが生じる。症例が最も多い。
弯曲爪 … 陥入爪が爪の両側で起こり皮膚を「のの字」に巻き込む症状。
爪甲鈎弯症 … 爪甲が異常にぶ厚くなり異常に伸びて角のような尖った外見になる症状。年配の方に多い。
巻き爪になりやすいスポーツ
足の爪に負担をかけるスポーツは意外と多い。
巻き爪の原因の一つに、足の爪に圧力がかかることがあるが、スポーツは常に外的衝撃にさらされているためだ。具体的には、屋内屋外に関わらずシューズを履き、走っては止まりを繰り返す運動が、思っている以上に足の爪に負担をかけ蓄積している。
主なスポーツを以下に挙げる。
- ランニング
- ウォーキング
- 陸上競技
- バレーボール
- サッカー
- テニス
- バスケット
- その他の瞬発力や接触プレーがあるスポーツ
巻き爪の症状
爪はもともと巻いていく性質がある。巻き爪は、その性質が抑えられないために起こる症状だ。巻き爪が進行していくと、爪の下の肉に弯曲した爪がどんどん食い込み、しだいに痛みが生じさせる。
ひどい場合は、爪が周囲の皮膚にくい込み炎症を起こしたり、曲がった爪に巻き込まれた皮膚が化膿し歩行ができなくなる場合もある厄介な症状だ。だから、巻き爪は見た目が悪くなる程度のことと、侮ってはいけない。
スポーツとは離れるが、糖尿病を患っている場合、合併症である神経障害や血管障害などにより、巻き爪の進行に気づかず、最悪の場合は足の壊疽を引き起こすケースもあるほどだ。
日常生活でも、非常に怖い症状であることを覚えておきたい。
巻き爪の主な原因
巻き爪になる原因は、だいたい次の5つに大別される。
1.不適切な爪切りの習慣
2.不適切なシューズの着用
3.足の指をほとんど使わない生活(浮き指)
4.スポーツや運動による指や爪への外的衝撃
5.後方重心
6.体質による原因
それぞれもう少し解説していこう。
1.不適切な爪切りの習慣
不適切な爪切りの習慣とは、端的に言うと、深爪だ。
深爪だと、直立歩行で足の指に力が加わった時に、爪先の先端の皮膚が地面からの力を受けて盛り上がる。下図のような状態だ。
爪は真っ直ぐ伸びようとしても、盛り上がった肉の壁に邪魔されて真っ直ぐに伸びることができない。その結果、爪の厚みが増したり、異常に上方向に伸びたり、皮膚にくい込む。
巻き爪で痛みを伴う場合、痛みの原因である爪を深く切り込むことで、一時的には痛みからは解放される。
しかし、深爪をすると上図のように爪周りの皮膚が盛り上がり、爪の成長を妨げてしまう。それだけではない。爪が伸びるにしたがい、爪の巻き込みはさらに強くなり、痛みも増し、悪循環を繰り返してしまう。巻き爪の予防には、深爪は厳禁だ。
2.不適切なシューズの着用
これは、足の形に合わないシューズや爪先に余裕のない靴を履くことだ。
小さいサイズの靴や足先の細くなった靴を履くことで、爪や指先が常に圧迫された状態が続き、巻き爪の原因となる。女性は、日常生活でヒールの高い靴、先のとがった靴を履くと、指先に体重が集中してしまい、爪を圧迫して巻き爪の原因になりやすい。これは圧迫状態が継続すると、爪の巻く力が強くなるためだ。
逆に、大きいサイズの靴は、靴の中で足が必要以上に動いて、指が靴の内側に継続的に当たり、巻き爪を引き起こす原因となる。
3.足の指をほとんど使わない(浮き指)
小さいシューズで巻く力が強くなるのとは逆に、爪が広がる力が作用しなくなる状態も巻き爪の原因となる。以下の図をご覧いただきたい。
爪はもともと巻いていく性質があることはお伝えした通りだが、この巻く力に対抗するのが、歩くことで受ける地面からの力(爪圧)です。これは爪を広げる力として作用し、これらの力のバランスが取れていると、爪は平らになる。
爪圧については、こちらをご覧ください。
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巻き爪を引き起こす足の指をほとんど使わない生活とは、例えば、
- 足の指でしっかりと蹴り出さず、ぺたぺたと歩く癖がある人
- 日頃から運動をしていない人
- 寝たきりの状態の人
- 足の指に体重をかけない人
歩き方に原因があり、指先にしっかりと重心のかからない歩き方をしていると、足の指が地面から浮き上がり、爪の広げる力の作用を弱めることになる。
4.スポーツや運動による指や爪への外的衝撃
足指の爪をぶつけたり、指先や爪に激しい負荷をかけすぎると、爪の側面や周辺の肉の部分に炎症を起こすことがある。これがスポーツ特有の巻き爪になる原因だ。
炎症した部位が盛り上がってしまうと、爪の両端に肉の壁ができたことと同義となる。その結果、両端の壁に爪を圧迫され巻き爪になる。
例えば、
- 足の上に重いものを落として衝撃が加わった時
- 長距離のランニングで靴ずれが起きた時
- サッカーやラグビーなど接触プレーがある競技で他選手に踏まれた時
- バスケットボールやテニスなど瞬発力が必要なのスポーツで指先に負荷がかかった時
5.後方重心(かかと重心)
「3.足の指をほとんど使わない(浮き指)」とも似ているが、立った時の重心がかかとに寄っていると、歩く時に足の指を使わない状態となる。
骨盤が、足首〜膝の延長線上に乗ってなく、後ろ寄りにズレている状態である。昔の例になるが、ホンダのロボット「アシモ」のような歩き方だ。ペタペタ歩きをしている人に多い。
重心が後ろにあると、体の前にある指まで体重をかけて歩くことがしにくく、巻き爪を助長してしまいます。
6.体質による原因
これまでは巻き爪の環境要因を見てきたが、爪の形状自体が原因で起こることもある。特に、爪が薄い、柔らかいという方は、巻き爪になりやすい。
また、人間には痛みから身を守る無意識的な防御機能がある。
巻き爪の場合、痛みから足をかばおうと、無意識にいつもとは違った歩き方をしてしまうことで、足首や膝、腰などの関節を中心にして負担がかかり、捻挫や膝痛、腰痛の原因になることもある。
つまり、巻き爪となる原因は、日々の生活習慣にあるとも言えるだろう。
巻き爪になるメカニズム
足の指の中で、体重の荷重が一番かかるのが、親指。巻き爪に一番なりやすいのも、親指。これは単なる偶然ではありません。
人間は体重を支えるにあたり、足裏前部にかかる自重を支える役割を指が担っている。その中でも「指の反力の約40%は親指が受け持っている」という研究があるのだ。
それだけ親指には強い力を受け止められるだけの、強い爪がある。言い換えると、強い地面からの力に耐え切れるほどのアーチを親指の爪は持っているのだ。
だからこそ、親指にしっかり力をかけて蹴り出す動きが必要になる。その自然な動きができていれば、巻き爪は起こらない。
巻き爪のメカニズムをまとめると、
爪がもともと持つ巻く形状(アーチ形状)
↓
深爪
↓
指先に受ける力を爪で対抗できない
↓
徐々に痛みを伴う
↓
痛みをかばうバランスが崩れた歩き方
↓
巻き爪の進行を助長 + 関節トラブルへ発展
この悪循環が、巻き爪を進行させ、スポーツパフォーマンスを低下させる原因だ。
巻き爪の注意事項
巻き爪には、スポーツによるリスクと日常生活によるリスクがあることが分かった。アスリートにとっては、オンシーズン、オフシーズンともに気を払うことが大切だ。
しかし、それでも巻き爪が起きることはある。それでは巻き爪になった時、もしくはその傾向が見られた時の治療や予防する方法を見ていこう。
巻き爪の治療方法・経過観察
巻き爪は、重度になると専用の器具で矯正したり、医療機関で外科的に処置したりするが、日常から正しいセルフケアをすることで予防ができる。また、巻き爪矯正を受けて改善した後も、再発予防のためにセルフケアは欠かせません。
医療機関での外科的な処置
外科的な処置は、変形した爪に少しずつ力を加えて矯正していく方法で、
- マチワイヤー法
- VHO法
- クリップ法
- BSブレイス法(BSスパンゲ)
など、様々な方法がある。医療機関によって、得意としている矯正方法は異なるのでよく医師と相談して矯正方法を選択するのが良いだろう。
アスリートサロンの以下「爪の相談先」のページも参照されたい。
「爪が割れた、欠けた、剥がれそう、凸凹している、筋がある」「巻き爪が痛くて、プレーができない」「最近、体幹がブレるのを感じるけど、原因が分からない」 …など、様々なスポーツに関する悩みを解決できる各種専門分野[…]
セルフケアでの対処方法
アスリートにとっては、四六時中、医療機関に通うことも難しいだろう。ここでは巻き爪を悪化させないセルフケアの方法について紹介する。
正しい爪切りを行う
爪先の白い部分をすべて切ると切り過ぎ。爪のカーブにピッタリ合わせて切ると深爪になる。
それでは正しい爪切りとは、どのようなものか?
適切な爪切りとは、爪の長さを指先と同じくらいの長さに整え、爪先は真っ直ぐ爪の根元と平行になるように少しずつ切り、角を少し落として仕上げるスクエアオフのカットがおすすめ。
しかし、これはあくまで一般的な基準だ。アスリートの競技やポジション、プレースタイルによっては多少前後するだろう。大切なのは実際にプレーをして違和感を感じない状態をつくることだ。自分のベストを探り、少しずつ長さを変えて試してもらいたい。
シューズのサイズに注意する
これが一番重要なポイントである。
小さくても大きくても巻き爪になる。一般的に、指先の余裕は5~10mmが最適と言われているが、自分の足型や土踏まずがきちんとフィットしていることを試し履きして確認すること重要だ。
また、シューズのタイプが紐靴の場合、サイズが合っていたとしても、しっかりと紐を結んで試し履きすることをおすすめする。紐が緩いと結果的に大きな靴を選んだ場合と同様、靴の中で足が動いてしまい、巻き爪を引き起こしてしまうからだ。
試し履きも必ず左右両方の靴を履き、少し歩いたり左右に動くなどして、違和感がないものを選びたい。
理想を言うと、足型を測り、自分の足にジャストフィットするフルオーダーメイドのシューズが良い。しかし、フルオーダーできなくとも必要に応じて、インソールを活用することでぴったりのシューズを見つけることはできる。
シューズ、インソール選びにはアスリート自身のプロネーションも把握しておくとなお良い。
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日常生活でのハイヒールは控えめに
ハイヒールなど踵が高い靴はファッション性を追求したものであり、靴本来の足の保護を目的とするものではありません。
祝勝会やパーティーなど、時間とシチュエーションを限定し、履いている時間を短く管理することが大切だ。
正しい歩き方をする
着地の際に、足裏全体でペタペタっとする歩き方の癖を直すことも大切です。正しい歩き方は、
1.爪先を正面にまっすぐ出す。
2.踵から着地する。
3.足裏の外側から重心を指先(小指側)に移動させ、
4.さらに、小指側から親指側に重心を移動する。
5.足の指先でしっかり蹴り出し、地面から離れる。
となる。
痛みが強くない場合や深爪を正しい長さまで伸ばす間は、テーピングによっても症状を軽減できる。テープを爪の外側の端の皮膚に固定し、指の腹に沿わせながらテンションをかけて引っ張り、爪の逆側にらせん状に回して固定する。
この意図は、巻いている爪と皮膚の間に少しの隙間をつくることで、爪の食い込みを緩和することにある。
アスリートネイルトレーナーによる対処
巻き爪が問題なのは、巻き爪による痛みだけではなく、痛みをかばう歩き方になることによる膝や腰の痛みや転倒のリスクを抱えることにある。
アスリートネイルトレーナーは爪の専門家だが、知識として基礎的なスポーツ医学を習得している。だからこそ、爪が関節に与える悪影響を把握した上で、アスリートの競技、ポジションによって改善に向けたアドバイジングを行えるのがメリットだ。
足の親指の爪が生え変わる期間は半年以上もかかる。それだけ巻き爪は長期的な改善計画が必要になる。アスリートネイルトレーナーはその間、アスリートの爪の質を確認し、トレーニング効率が上がるように時として補強を行い、また爪の育成を助けるケアを施し、健康的な爪が正しく生えてくるようアスリートのサポートを行なっている。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
- スポーツは常に外的な衝撃にさらされ、巻き爪になりやすい
- 巻き爪予防に、深爪は厳禁
- 足の指にしっかりと力をかけることが、巻き爪予防になる
- 巻き爪は、痛みをかばう動きになることで膝や腰の痛みを抱えるリスクがある
- 巻き爪は、早めのケアが重要
スポーツをする時点で、巻き爪のリスクを抱えることは覚えておきたい。その前提で爪のメンテナンスを行い、常にベストな状態でいることがトレーニングの質を高めることにつながる。また、シーズンオフにあっては、日常生活の中にも巻き爪の危険が潜んでいるのでぜひ見直していただきたい。
爪の各部位の名称や機能については、以下の記事を参照いただきたい。
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