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「腸」と聞いて、何を思うだろうか?
アスリートには一見関係ないように思えるが、そこには意外な関係があった。
まずは意外な数字から。
私たちの腸内には、約1,000種1,000兆個以上の細菌が生息しています。実に重さにして、1~2㎏にもなる。
これは体重80kgのアスリートの約2.5%は腸内細菌からできている計算だ。細菌ひとつひとつは微細で微量だが、もはや私たちの一部としてと共生すべき関係にあると言えるだろう。
この記事では、腸内細菌 がアスリートに与える影響を解説します。腸内細菌とうまく付き合うことが、体質改善とボディトレーニングに役立つという内容を見ていこう。
腸内フローラとは?
フローラとは、花畑([ 英語 ] flora)のこと。腸内に生息している様々な種類の細菌が、美しく群れをなしてまるで花畑のようにびっしりと敷き詰められていることから、こう呼ばれている。以前は「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」と言われていた。
腸内フローラ の大きな特徴は、
- 腸内細菌の多様性を高めることは、健康維持に良い影響をもたらす。
- 様々な食品を摂取することで腸内細菌の多様性を高められる。
- 腸内フローラ は、体調や年齢によってバランスが変わる。
- 消化できない食べ物を、身体に良い栄養物質へ作り変える
- 腸内の免疫細胞を活性化し、病原菌などから身体を守る
となっている。
腸にいる3つの菌
腸に棲み着いている菌は、次の3つの菌に分けられる。
善玉菌
体に良い働きをする菌。
悪玉菌の侵入や増殖を防いだり、腸の運動を促すことでお腹の調子を整える。
代表的な菌 | ビフィズス菌、乳酸菌 |
---|---|
作用 | ビタミンの合成、消化吸収の補助、感染防御、免疫刺激 |
体への影響 | 健康維持、風邪やアレルギー改善効果が期待される |
悪玉菌
体に悪い働きをする菌。
脂質や動物性たんぱく質を好み、腸内で有害物質をつくり、便秘や下痢などお腹の調子が悪くなることもある。
代表的な菌 | ブドウ菌、ウェルシュ菌、大腸菌(有毒株) |
---|---|
作用 | 腸内腐敗、細菌毒素の産生、発ガン物質の産生、ガス発生 |
体への影響 | 体調不良や病気の引き金となる |
日和見菌(ひよりみきん)
腸内の善玉菌と悪玉菌に対して、優勢な方の味方をする菌。
代表的な菌 | バクテロイデス、大腸菌(無毒株)、連鎖球菌 |
---|---|
体へ影響 | 健康時は無害だが、体調が悪くなると腸内で悪い働きをする |
善玉菌・悪玉菌・日和見菌の理想のバランスは、2:1:7と言われている。
例えば、多種多様な細菌が共生している状態だと、ある菌がダメージを受けたとしてもそれを他の菌がサポートできるので、善玉菌が多い環境が理想的だ。
なぜスポーツで、腸活なのか?
「腸活」とは、腸内フローラ のバランスを整えることだ。
これまで見たように、健康維持と健康増進には、善玉菌が優位の腸内環境をつくる必要がある。そして、これはコントロールできるトレーニングとして活用できる。
大切なのは、善玉菌を増やすものを積極的に摂ること。
腸内フローラが整うと、
- 便通の改善
- がんや糖尿病、アレルギー疾患の予防・改善
- 肥満や認知症、うつ病などの予防・改善
- 肌や爪のコンディションやアンチエイジングなどの美容効果
というメリットがあるが、アスリートにとっていちばんの効果は、
腸内フローラは「活性酵素」に対抗できることだ。
トレーニングによって体の消耗が激しいアスリートにとって、体をサビさせる(=参加させる)活性酵素に対抗できるのは、非常に大きなメリットと言えるだろう。
爪の生育にも影響する
爪の主成分は、硬ケラチンというタンパク質。つまり、タンパク質が構成されているアミノ酸の摂取効率を良くすることは、強い爪を作り、育成させるための重要な条件となります。
トレーニング前後のプロテイン摂取は、筋肉疲労を軽減するだけではありません。スポーツパフォーマンスを上げる必須条件となる爪にも作用することを知っておくと、より良いパフォーマンスに繋がります。
腸活のやり方と2つのコツ
有用な菌を摂る「プロバイオティクス」
身体に良い善玉菌を含むものをプロバイオティクスと呼ぶ。
【具体例】ヨーグルト、漬物、海藻類
善玉菌のエサになるものを摂る「プレバイオティクス」
善玉菌の栄養源となるものをプレバイオティクスと呼ぶ。
【具体例】食物繊維、オリゴ糖、ビフィズス菌、ラクトパチルス
プロバイオティクスとプレバイオティクス、そしてその両方を一緒に摂取するを「シンバイオティクス」と呼ぶ。
腸内フローラを整えるには、高食物繊維、低タンパク、低脂質の食事が大切だ。
アスリートの腸活で摂取したい4つの食品
続いてアスリートにとって、腸活でオススメの食品を紹介する。
①海藻類
水溶性食物繊維。腸内の老廃物を体外へ出す働きをします。また糖質の吸収を穏やかにして血糖値の上昇を抑える。
②きのこ類
不溶性食物繊維。腸内で水分を吸収して膨らみ、蠕動運動(ぜんどううんどう)で腸の動きを刺激し、便を出しやすくしする。
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の摂取割合は、2:1がおすすめ。
また、便秘の方は、水溶性食物繊維で老廃物を出した後、不溶性食物繊維を摂取してください。この順番が逆になると、詰まった腸内で不溶性食物繊維が膨らみ、便秘を長期化させることにつながってしまうのだ。
③発酵食品
乳酸菌、納豆菌など。腸内環境を整えて免疫力がアップする。
野菜などの植物を発酵させる「植物性乳酸菌」は厳しい環境にも強く、牛乳に繁殖してヨーグルトをつくる「動物性乳酸菌」よりも、胃酸や胆汁酸にも負けずにより多く腸に到達できる。
④ねばねば食材
ねばねばに含まれる「ムチン」は腸内環境を整えます。胃の粘膜保護し、タンパク質の消化を促す効果があある。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
- 腸活は、腸内フローラ の多様性を保ち、バランスを整えること。
- 善玉菌を含むものと、善玉菌のエサになるものを一緒に摂取すること。
- 腸活は、体を酸化させてしまう活性酵素に対抗できる。
アスリートにとって、食べないという選択肢は避けるべき問題です。まだ腸活に取り組んでないアスリートは、ぜひトレーニングの一環に組み入れてください。
腸活は、LBM (除体脂肪体重)の管理に並び、コンディショニングに大きな影響を与えることが分かっていただけたと思う。ぜひ食生活の面でもバランスのいい食事を摂り、食べたものをできるだけ力に変えられる体を手に入れよう。
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コンディショニングのスポーツ栄養学 樋口満 著