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投げる、掴む、走る、跳ぶ。
スポーツにおいて体のバネを力に変え、蓄えた力を最後にリリースする部位は、爪だ。
アスリート自身が思い描いたイメージ通りにプレーするには、爪が欠かせない。もし自分の理想の爪を手に入れられると、競技力はどう変わるだろう?
爪の形がパフォーマンスにどう影響を与えるのかを解説するので、アスリート自身が爪の形状を見直すきっかけにしていただきたい。
この記事を読むメリット
- 爪の形が与えるスポーツに与える影響を知ることができる
- 競技に最適化された爪がプレーに好影響を与えることが分かる
- 自由に爪の形をコントロールできるようになる
スポーツにおける爪の基本形
指の腹から加わった力は、末節骨と爪で受け止められる。その爪にかかる力のことを爪圧と言う。爪圧が高ければ、強い力に耐えられる。
野球のピッチャーが投げる豪速球は、選手の身体能力の他、この爪圧によって支えられているのだ。強い爪圧がかけられないと、リリースの瞬間、ボールを投げる圧力に爪が耐えきれず、割れてしまう。
そして、スポーツにおいて爪圧が効率よくかけられる爪の形がある。それがスクエアオフだ。
スクエアオフとは、爪先に向かってカーブを作らず直線で整え、爪の根元のラインと爪先が平行になるように爪を切り、少し角を落とした(オフした)形状のことだ。
爪の基本形から外れたリスク
スポーツをする時は、爪が原因でトラブルを引き起こすことも十分に考えられる。そのため、様々な配慮が必要となる。
爪が長すぎると、相手も自分も傷つける
個人競技ならいざ知らず、格闘技などの対戦競技では、伸ばしすぎた爪は相手に怪我をさせてしまったり、自分の爪が割れたり剥がれてしまうリスクを抱えている。
競技のプレーに支障が出ないことは大前提だが、スポーツをする時はプレーしていて違和感がない適切な長さに整える方がベストである。
爪が乾燥しすぎると、割れやすくなる
爪は乾燥した状態が続くと、亀裂や割れ、欠けが起こりやすくなる。これらの爪トラブルは、他の症状を連鎖的に引き起こしてしまうため、特に注意が必要だ。
乾燥に気をつけたいのは、体操選手、槍投げ、ハンマー投げなどの競技だ。これらの競技は、手の滑り止めに炭酸マグネシウムをよく使うが、炭酸マグネシウムは手を乾燥させてしまう。
爪が丸いと、亀裂や剥がれが生じやすい
爪の両側から爪先に沿って丸みを帯びた形状で整えたラウンドは、指の輪郭線ギリギリの部分において、爪圧がかけにくくなってしまう。スクエアオフと何が違うのか?
爪はもとより少しアーチがかって巻く性質があるが、爪先にあっては爪溝がなくなるため、顕著に巻いてくる。スクエアオフのように長方形に近い形で爪先まで伸びてくると、爪が指から離れた頃から長方形の両端が下向きに丸くなる。その結果、指の腹からの力に強い抵抗力を持てるのだ。
しかし、ラウンドの場合はどうなるだろうか?
爪が指先から離れても、丸みを帯びた爪の両側は下向きに巻かないため、スクエアオフよりは水平を保った状態で伸びる。そうすると何かに引っかかった際、突発的な力に爪が耐えられず上側に折れてしまう場合があるのだ。
このように爪の先が丸いラウンドの場合、ストレス(負荷)は爪の端に集中しやすくので爪の端から亀裂が入りやすい。丸いカーブを作らずに爪の先を直線にするスクエアオフなら、負荷は分散し割れにくい爪になるのだ。
ラウンドに整えられた爪は、見た目には美しいが、外的衝撃に弱いことを覚えておきたい。
理想の爪を手に入れるために
理想の爪を手に入れる2ステップを紹介したい。爪のセルフメンテナンスとチューニングだ。
セルフメンテナンス
これまでに見てきた「基本形から外れたリスク」をなくすことで対処ができる。
- 適度な長さに切る(爪切り)
- スクエアオフを保つ(爪切り)
- 乾燥から守る(ネイルオイル&ハンドクリーム)
この3点を徹底してケアするだけでも、大きな予防効果がある。
ネイルオイルとハンドクリームはトレーニング後のケアに使うが、おすすめするのはトレーニング前のケア。市販品で爪の「補強コート」や「ベースコート」というものが販売されている。これらには保湿効果が含まれているので、トレーニング前に塗ってからスポーツをすることで爪のトラブルから守ってくれる効果が期待できる。
チューニング
スポーツは競技やポジションによって体の使い方が微妙に異なる。チューニングは、スポーツに適したスクエアオフの爪からアスリート自身の競技やポジションに最適化することによって、理想の爪を手に入れることである。
例をひとつ挙げよう。バスケットボールのスリーポイントシューターの場合、通常よりも爪を長くする選手がいる。一般的には爪先の白い部分が1〜2mmだが、4〜5mmくらいがベストだと言う。その理由はシュート成功率を上げるため。シュートフォームボールタッチに感覚を研ぎ澄ました結果、リリースの最後に残る爪の感覚で、放たれた瞬間にシュートの成否が分かると言うほどだ。
チューニングの具体的な方法
では、チューニングはどのようにすれば良いのだろうか。
爪の長さを大きくする
爪の長さを大きくすることで、爪全体で爪圧をかけることができ、掴む、握る、踏ん張る力が高まり安定感も増す。
アスリート自身でもできるケアの方法を解説しよう。次の3点が大切。
1.爪切りの時は、フリーエッジを長めに残しておく
2.ハイポニキウムをできる限り刺激しない
3.ネイルオイルとハンドクリームを使用し、乾燥から守る
爪は一日に0.1mm伸びてくる。その際、爪が密着している爪床も一緒に前に伸びてくる。指の先端には骨がないので、爪が支えとなって皮膚も一緒に前にせり出してくるのだ。その際、重要な役割をしているのが爪下皮(ハイポニキウム)である。
そのため、爪の長さを大きくするには「2.ハイポニキウムをできる限り刺激しない」が特に重要。ハイポニキウムは非常にデリケートであり、乾燥や外的な刺激によってどんどん爪から離れ、後退してしまう。
爪の長さを小さくする
爪を小さくすることは、ピアニストやギタリストなどの音楽家で見受けられる。アスリートでは、例えば、柔道では乱取り中や足の爪が畳に引っかかってしまうことを避けるため深爪ぎみにする話も聞く。
基本的には逆のことをすれば良い。
1.爪切りの時は、少し短めに切る(深爪は推奨しない)
2.ハイポニキウムを刺激する
しかし、爪を小さくしたい場合も、ネイルオイルとハンドクリームを使用して乾燥から守ることは続けてもらいたい。乾燥は、二枚爪、割れ、剥がれを引き起こすため、形をコントロールする以前に爪の健康を阻害してしまうからだ。
爪を厚くする
爪圧を高める方法は、爪を大きくすること以外に爪を厚くする方法もある。爪を厚くするには、根元から健康な爪が生えてくることを促進するのが良い。それにはルースキューティクルを取り除くことが大切だ。
ルースキューティクルは爪の表面に非常に薄く貼り付いている皮膚の一部。爪は爪床から水分を供給されているが、ルースキューティクルが多いと爪から水分を奪ってしまい、割れやすく皺がよった爪に逆戻りしてしまう。また爪の成長もルースキューティクルに妨げられ、均一に厚い爪が生えにくくなってしまう。
ルースキューティクルを取り除くことは、新しい爪が健康的に生えてくることに欠かせない要因である。
アスリートネイルトレーナーのアドバイス
アスリートネイルトレーナーは、これらの知識を有し、アスリートへのヒアリングとカウンセリングを通し、長期的にチューニングを行うパートナーである。
3ヶ月後、半年後の目指すべき爪の状態を設定し、それに向けたコンディショニングとアドバイジングを行うことで、アスリートとともに目標達成に向けて二人三脚で改善を繰り返すトレーニングパートナーである。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
- 爪圧が高ければ、強い力に耐えられる
- 爪圧が効率よくかけられる爪の形が、スクエアオフ
- 手の滑り止めに使う炭酸マグネシウムは、手を乾燥させる
- アスリート自身の競技やポジションに最適な爪にチューニングすることでパフォーマンスの改善が期待できる
スポーツに焦点を当て、様々な爪の形状を見てきたが、一番重要なのはプレーに違和感を残さないことである。違和感がないことは、自然な状態でプレーに集中できることを意味する。自身のパフォーマンスを最大限に引き出す爪の力。この機会に理想の形を考えてみてはいかがだろうか。
余談ではあるが、女性アスリートには、デザインのネイルアートをしておしゃれを楽しむものも多くいる。
ロンドンオリンピック(2012年)では、国旗やオリンピックカラーをイメージしたネイルアートをした女性アスリートがいた。日本人選手では、女子サッカーの「なでしこジャパン」や卓球の福原愛さんなどがキレイなネイルアートで注目を集めた。女性にとっては、美のネイルアートは気分を高める作用が働き、競技結果に好影響を与えるかもしれない。
爪には、美と機能の両面がある。両方ともアスリートに好結果をもたらす効果があることに目が離せない。